「スタバでバイトしている女子大生のSurface Pro 7が不調になったのに、私には直せなかった」とWebレポートしているオッサンがいた。残念ながらどうやっても彼の力は及ばず、カッコ良いところを見せることが出来なかったとのことだ。
同じオッサン族の一人として、この気持ちは痛いほど分かるつもりだ。しょぼくれた人生を送っている者ほど、若者が困っているのを見ると “ベテランの底力” を誇示したくなる傾向がある。
そこで今回は後付けの説明になってしまうけれども、いったい何が起こって、それに対してどのように対応すれば良かったのかを解説しておきたいと思う。
まず肝心な学生さんのSurface Pro 7だけれども、次の不具合が生じたとのことだ。詳細に興味のある人は、Google検索をかければ簡単にヒットするので、直接目を通してみるのが良いかと思う。
- カメラが映らない
- タッチスクリーンが機能しない
オンライン授業の時代にカメラが使えないというのは、なかなか気の毒な話だ。授業を聴講するだけならばともかく、チーム作業があった時には困ってしまうかもしれない。
何でも彼の説明によると「カメラのドライバーには異常なし。タッチスクリーン関係は、複数にたくさんのビックリマークが付いている状態だった」とのことだ。それで彼はOS再インストールしたり、Windowsアップデートをかけてみたとのことだ。
しかし残念ながら、状況は全く改善しなかったそうだ。それで彼としてはハードウェアの不具合だろうと判断し、学生へマイクロソフトへの修理依頼を勧めたとのことだ。記事の投稿日が2020年10月9日となっており、おそらく今から一年くらい前のことになる。
そしてオッサン(名前を公開していないでオッサンと自称しているので勝手に命名)は、2021年2月22日に追加情報を公開してくれている。なんと、いつの間にかSurface Pro 7は問題なく動作するように自然治癒してしまったとのことだ。
ちなみに学生としてタッチスクリーンはともかくカメラが使えないのは困るので、別なマシンを使っていたらしい。で、Surface Pro 7は忙しくて修理依頼に発送/受け取りする暇がなかったので、放置していたとのことだ。
そうして2021年に入って電源を入れて使っているうちに、カメラもタッチパッドも問題なく動作するように直ってしまったとのことだ。それに加えて、修理依頼に出したら機器交換でデータ消失となるということで、実に危ないところだったらしい。
何となく内容からして、オッサンとは別な者が支援した気配はない。ともかくオッサンとしては面目丸つぶれであり、彼としては「Windowsアップデートが自動で動いたりして、対策パッチが入ったり、ドライバ類の更新がかかったとしか考えられない」とボヤいている。
「・・・」
痛いほど… 本当に痛いほど気持ちは分かる。「俺が診てやる」と言って自然治癒されてしまったのでは、パソコン通という面目は丸つぶれだ。Surfaceの悪口を言いたくなる気持ちも分かる。たしかにSurfaceは、普通のパソコンとは一味も二味も違っている。
このところSurfaceで苦労してノウハウを身に着けたITメーカ技術者としては、思わず彼の肩を叩きたくなる。ちなみに僕の場合は子供から、「父ちゃんでも治せないのか!」と容赦のないモノ言いが降って来る。
ところで彼の事例を紹介させて頂いたのは、記事中に本当に貴重な情報が隠されているからだ。それは何かというと、”Surfaceバッテリーの自然放電期間” である。
まずSurface Pro 7の不具合原因からいうと、どうやら “パソコンあるある事例” の一つである、「常時通電状態によって生じた機器不調」らしい。家電品で調子が良くない時にはスイッチを切るだけでなく、コンセントを抜いて放置すると良くなるといった類のアレだ。
ノートパソコンでもバッテリーを取り外すことによって復調することは良くある話だし、Surface RTではバッテリコネクタを外して回復させた体験談がある。Surface Pro 7にしても、起動しなくなった場合には完全放電によって回復した事例が多数報告されている。(コチラの記事参照)
僕が知っている話としては、半年以上放置したらSurface Pro 4バッテリーが完全放電状態になる事例が報告されていた。今まではこの2件しか知らなかったけれども、これで3件目?(& Surface Pro 7では初事例)と言える。
リチウムイオンバッテリーは製品によって差異があるけれども、毎月1~10%ほど自然放電する。そしてSurface Pro 7のWindows 10は、デフォルトではバッテリー残量2%でシャットダウンするように設定されている。
おそらく10月9日に記事投稿のあった時点では、100%満充電状態でチェックした可能性が高い。その後でSurfaceは放置、つまり何かあった時に反応できるようなスリープ状態になり、短期間のうちにバッテリー消費が進んでシャットダウン状態へ移行した。そしてリチウムイオンバッテリーの自然放電による完全放電によって行き着く過放電状態などへの対策として用意された残量2%は、再びSurface Pro 7に火が入る2か月あまりの期間にすべて消費されてしまっていた。そう、「完全放電」だ。で、奇しくもノートパソコンのバッテリーを取り外したのと同じ状態となったおかげで、再びカメラやタッチパッドは順調に稼働するようになった、という訳だ。
だって考えてみればマイクロソフトともあろう存在が、Surface Proの最新版である “7” で不具合を放っておく訳がない。そんなことがあったらIT業界では大騒ぎになり、あちこちのIT情報誌が記事を出す事件となってしまう。
(ちなみに2021年10月16日時点では、Surface Pro 8の出荷開始が記事になっている)
あとオッサンにアドバイスしておくと、まずは最初にマイクロソフトのホームページを参照して、強制シャットダウンや強制再起動も試しても良かったかもしれないと思う。バッテリー完全放電は超強力な切り札だけれども、リチウムイオン充電池には嬉しくない影響を及ぼす。
何しろスマホを数年間放置した人ならばご存じだと思うけれども、バッテリーは過放電状態になると化学反応を起こして膨張し、機器破損なども起こしてしまう。だからマイクロソフトの公式ページが推奨するように、長期保存時はバッテリー残量50%程度にしてシャットダウンさせておくのがベストなのだ。
今回の事件は以上である。それにしても僕のジャンク品Surface Pro 6だけれども、上記ページによるとBattery Lifespan Saverのサポート対象外となっている。販売開始されたばかりSurface Pro 8や新品Surface Pro 7には手が出ないし、やはり値崩れの始まった中古Surface Pro 7は… 魅力的だ。
(Surface Pro 6と異なり、完全放電にUSB-Cポートを利用可能だしねえ)
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:小野谷静